黒澤明 - 男の肖像

男の肖像身体美学講座 Fhysical Aesthetics

黒澤明

若い頃正面 晩年正面

2013年6月3日

世界で最も有名な日本人かも知れない。
いいかえると世界で最も名声の高い日本人。
おそらく日本の政治家で並ぶ人はいないだろう。
一時的に知られても忘れられていく存在ではない。

黒澤映画の特徴の一つは絵画のような映像の美しさ。
絵画の素養を持つ監督自身、各場面の絵コンテを描いていた。
美しい構図が妥協なく追求されている。

代表作の多くは白黒作品だが、カラー顔負けの美を感じさせる。
美しい構図に満ちているからだ。
黒澤作品の魅力の半分は、映像美だと言って過言ではない。

例えば晩年の作品、「夢」に象徴的に表れている。
いろんな夢を映像化した構成、つまり短編の集合作品。
ストーリー性より幻想的な映像世界を追求している。
現実を超越した映像美の世界が見所となる。
それを感じなければ「夢」の価値は分からない。

黒澤作品は世界の映画界に大きな影響を与えている。
その演出や構図は多くの作品でコピーされている。
リメーク作品も多い。

コピーはなくても影響受けている作品は多い。
世紀の代表作に数えられる「ゴッドファーザー」も例外でない。
同作は派手な活劇なれど、映像美も追求されている。
コッポラ監督は絵画の要素の追求を明言している。
黒澤の代表作「七人の侍」の作風に通じる。

映画は総合芸術といわれる。
黒澤の才能は画家の美意識と脚本の創作力が柱。
その圧倒的な水準の高さが世界的な理由だ。
映画の絵コンテが画集として販売もされている。

しかし国内の評価は、世界での名声と比例していない。
名声のきっかけは「羅生門」の世界的な映画祭の大賞受賞。
なれど同作の国内での評価は特に高くはなかった。

だから同映画祭に出品もされていなかった。
同作に感銘した外国人の個人的努力で緊急出品された結果だ。
海外での評価の方が高い傾向は生涯ついてまわる。
欧米人の方が美について敏感なのだろうか。

映画が斜陽化し、晩年は映画製作が思うようにできなくなる。
ついには天皇とまでいわれた男が、自殺未遂事件を起こす。
彼は映画でしか自分を表現できない欠陥人間だと自嘲している。
実際晩年の作品の評価はあまり高くない。

だが黒沢の名声は不滅だ。
はたして彼を超える日本人が今世紀現れるだろうか。
世界に影響を与える最も有名な日本人が。